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■旅・?秘湯?名剣温泉

2007年08月17日

平成19年のお盆旅行に、秘湯「名剣温泉」へ
行ってきました。
富山県宇奈月温泉からトロッコ電車に乗って
終点・欅平(けやきだいら)まで。

先ずトロッコ電車の遠かったこと。名にしおう黒部渓谷も、
トロッコとはいえ、乗り物の上からでは、スリルも緊張感もなく、
1時間20分近くは間延(まの)びのするものでした。

今夏の猛暑が、色褪せずに黒部渓谷にへばりついています。
欅平(けやきだいら)に着き、15分ほどで宿が見えてきました。

坂道とはいえ、苦になる坂でもなく、名剣はあっけなく
そこに存在していました。
外来の温泉客は午後2時までとなっていましたが、
もう4時過ぎ。

滅多に来れる所でもなく、入湯をお願いすると、
気持ちよく了承してくれました。感じのよい方でした。

旅館の玄関から、石段を下り、工事用の
コンパネ通路を少し行くと露天風呂です。
本当に崖にへばりつくような、狭くて小さなスペースで、
手前が男性、奥が女性風呂。それぞれ4、5名ぐらいが
限度のような広さです。

でも良かった。本来の露天風呂の素朴、質素、
手造り感が一杯でした。

狭く浅い湯船の目の前に、太い木の枝が青々と
葉を茂らせています。
すだれで通路を遮(さえぎ)り、まさに一幅(いっぷく)の絵心です。

A4かB5の雑誌の一隅(ひとすみ)に載せれば、
素晴らしいこと請負(うけおい)です。
泉質云々は兎も角、軽い硫黄泉は間違いありません。

前日の金太郎温泉が強い硫黄泉でした。
魚津市蛇田(へびた)にあり、市街地ながら山間部の様相です。
富山県は北アルプスの山から、勾配のように街が
富山湾になだれ込みます。
魚津市は正にそれを実感できる街で、魚の津、
津は港の意味を成します(魚津は漁港なのです)。

岩風呂を誇示しており、朦朧(もうろう)とした
湯気に強い硫黄臭が充満し、
私は「これぞ温泉だな、効きそうだな」と思いつつ、
屋内に少し辟易(へきえき)し、外の露天風呂に浸(つ)かりました。
「長過ぎると、返って逆効果」を思い出し、早々に出たのですが、
金太郎の庶民的な名は、ただ健康的なイメージで、
温泉にありがちな風情を含む、情緒も何もありませんが、
「ここは中々本格的な硫黄泉ですぞ」と私は言っておきます。

名剣温泉は、失礼ながら私の露天風呂思索(しさく)に
ピッタリの所でした。
現在の流行(はやり)の露天風呂ではなく、
そうあるべく、そうあるしかなかった趣(おもむき)です。

場所もなく、商業ベースに乗れるでもなく、その中での
創意工夫の風呂です。
誠に狭く小さく、それでも一振りの木の枝が素晴らしく、
川の音が素晴らしい。

如何(いか)な黒部峡谷の紅葉といえど、
この露天風呂からの眺めは、秋の冷気も相(あい)まって、
人の心を癒(いや)すだろうなと思わせられました。

「11月には閉めますので」という言葉と共に、
このような深山渓谷の温泉には
街のサンダル履きの人が軽い気持ちで訪れても、
その深い良さは理解しにくいかもしれない。

矢張り汗をかき、山歩きの醍醐味の後、
少し疲れを覚えて入るのがセオリーかな?
「日本秘湯を守る会」の看板が、トロッコの後僅か
15分の散策程度では勿体ない。

4時着、6時発の2時間もあれば充分のコースである。
欅平(けやきだいら)に着いた観光客は、
下に猿飛峡があり、そこで冷たい黒部の水に触れるか、
名剣近くまで歩くようだ。

帰りのトロッコの車中、乗客は皆眠りについていた。
矢張り1時間20分は長いとみえる。
カーブごとにトロッコの軋(きし)み音が高いのにびっくりした。

猛暑の熱気はまだ失せてなく、青空が黒部の山々を覆っている。
20キロを1時間20分弱だからスピードは出ていないのだが、
帰路突然感じた騒音は、目に見えぬ秋の静寂が、
周りを急速に圧(お)し包み始めたからであろうか。

麓(ふもと)の終着・宇奈月に着き、
駅を出ると驚くほど閑散(かんさん)としている。
まだ明るいが、秋の気配が薄い夕闇を誘っている。

駅前の湯の噴水が、残暑を散らして舞っている。
ピーと汽笛が鳴り、今しも地鉄電車が始発駅を出る所だった。

スーッと少し蛇行して電車はすぐ視界から消えた。
目で追う間(ま)もなかったのに、電車の行った先から、
急激に秋の気配が押し出され、お盆と初秋の
物哀(ものがな)しさがつんと鼻を突いたのは、
硫黄の残り香だけではなさそうだった。
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伏見谷 徳磨

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