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■若きライオン

2007年10月01日

一般視聴者も猛獣界の王、ライオンが好きらしく、
その生態の諸々をよく目にする。
画面越しといえ、自然界の厳しき様子が良く分かり
感動しきりである。

食物連鎖のトップに立つライオンであれば、
さぞ人間のように繁栄しているかと思いきや、これが厳しい。

自然界は生存するのに優劣を与えていないのかもしれない。
食うもの、食われるものの条件は全く運次第だ。

ライオンも勿論その例外であるわけもなく、
連鎖の頂点ゆえの過酷はライオンなればこそのものが多い。

捕食者が多すぎると、それは即ち食糧難につながる。
ライオンは自らが種を厳しく律して、淘汰を図っているのである。

群れの頂点の雄ライオンが新しい雄ライオンに追い出され、
成長期の姉弟が残された。これがより小さいと殺され、
母親は瞬時に新しい雄の子を迎え入れる状態になる。

姉弟は充分成長し、発情期はまだだが、
新しいボスには目障りである。そして雄のほうは放逐された。

姉弟は本当に仲がよく、いつも連れ添って歩いていたのにである。
これも近親による弱い遺伝子を防ぐ手立てとなり、
自分の種を残す本能に基づくものらしい。

さて追い出された若いライオンである。あちこちを放浪し、
同じ境遇の若い雄ライオン同士でグループを作る。

食料は草食動物たちだが、この狩りが中々大変なのである。
ライオンの群れは主にメスが集団で狩りをし、
雄はそれを頂くという生活を目にするが、
この若い雄たちは、とにかく経験不足が目立つ。

どの若いライオンも随分狩りの成功に預かれず、
骨と皮ばかりに痩せこけ、表情も若く未熟っぽい。

この若いライオンをある夜、ハイエナの集団が襲うのである。
ハイエナはグループで、よくライオンの集団とさえ
対峙する実力者である。勿論餌を巡り、縄張りを巡ってだ。

若いライオンはこうして命を落とすことも多い。多勢に無勢。
だが痩せているとはいえ、骨格も大きく逞しいライオンに
ハイエナの戦法は威嚇とちょっかいに似た攻撃から、
だんだん時間をかけ、総攻撃へといくのだが、異変が起こった。

周囲を囲まれたライオンも身を守るのが精一杯だ。
段々興奮が激昂(げっこう)してきて、ハイエナがライオンの
すぐ傍で攻撃をし出す。そしてパニックが起こった。

もう一匹の若いライオンが、仲間の加勢よろしく、
ハイエナの群れに躍り出たのだ。ライオンの実力や恐るべし。

ハイエナは縄張りや餌の必然性からライオンを襲うが、
その実力の比は天と地ほどもあるのである。そして知っている。

数を頼って威嚇し、ライオンを追い払うのが主で、
余程手負いか老いたライオンでないと、殺すまではいかない。

大きなライオンの動きは、周囲のハイエナの動きと比べ、
緩慢にさえ見えたが、一陣の砂埃の後、
若い飢えたライオンは口にハイエナをくわえていたのである。

前足の一振りか、顎の一咬みかしれぬが、
ハイエナはライオンにくわえられ、既に餌と化していた。

強力な助っ人に、それまでの攻勢から一転群れは
パニックに陥り、興奮状態は雲散霧消した。

ハイエナをくわえたまま、ライオンはゆっくりひざまずいた。
強度の飢えが、ハイエナの攻撃を幸いにして、
それを食料としたのである。

こうして若きライオンの荒野の旅は続き、実力を蓄え、
いつか他の雄を追い出し、自分がグループの長となる日を狙い、
ハイエナはライオン恐るべきを身を以って知り、
戦々恐々としながらも、グループの結束を固め、
縄張りを侵すときには、敢然と立ち向かうのである。

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伏見谷 徳磨

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