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■おわら節で舞う「風の盆」

2008年08月28日

立春から数えて210日目当たりが台風の襲来時期といわれる。
この頃は丁度稲の刈り入れ時期と重なり、
農家の人にとっては一大事の時期だった。

台風のもたらす暴風雨は、自然災害の最たるもので、
稲が倒れて収穫出来なくなれば、翌年は飢えなどが危惧される。
又土砂や、家屋崩壊等々・・、
兎に角、台風は人命や生活を脅かす恐ろしいものだった。

為す術を知らない人々が出来る事は、只畏怖への祈りだったろう。
旧き伝統のお祭りとか、祭礼には大体このような意味合い
(自然との関わり)が含まれているようである。
それは同時に又人々への慰労となり、
感謝となり、連帯への儀式となっていった。

とまあ、各地方に伝わる祭りは多々あるのだが、
とある深夜のラジオ放送が僕の耳を止めた。
ラジオ深夜便と銘打ち、聴取者はまあ高齢者の方が多いらしい。

東京の女性の方で、季節の催しの案内のテレビかラジオで、
「越中八尾の風の盆の時期です」と聞いたらしい。
その方は若い頃、「風の盆」を訪ねて、富山の山深い八尾へ行ったらしい。

その方の人生の変遷は知らないが、まあ老境には入ったのだろう。
急に居たたまれなくなって、その日の列車に乗り、
富山へ向かったのだそうだ。富山から高山線に乗り継ぎ、
八尾へ着いたときは夜も随分更(ふ)け、その方は寝袋持参で、
聞名寺の境内に潜り込んだらしい。

「風の盆は」9月1日、2日、3日と山の小さな街、
八尾(やつおと呼びます)を挙げて行われます。

八尾は本当に小さな街で、又本当に何もない街で、
只坂道と、街の両側を流れる側溝の水の音だけが聞こえる街です。

長い歴史と伝統を保ち、地元の人と共に歩む「風の盆」も
近年つとに名を馳せているようですが、
今一、盛り上がりや活況に欠ける趣があり、
故にいつまでも静かなマイナーな位置を保っているようです。

秘境や未だ知られざる何かに憧れる現代人を、
少しはくすぐっているらしく、色々な著名人が訪れ、
又歌や小説の舞台にも登場しているのですが、
何(いず)れも大ヒットという訳にはいかない様で、
中々奥床しき静謐(せいひつ)という雰囲気が、
尚更、人々の心の中の季節や、旅愁を掻(か)きたたせるようでもあります。

そしてその人はお寺の境内の寝袋から夜空を見、
余りの星のきれいさに感動したと言うのです。
夜は刻々と更け、深夜3時、4時頃、既に雑踏は遠く、
寝付かれぬまま遠くから胡弓の音が耳に聞こえたそうです。

「風の盆」は、210日の台風を鎮める為、
「越中おわら節」という民謡の街流しをするお祭りです。

ポスターでご覧になる方が手っ取り早いでしょうが、
着物姿の女性の得も言われぬお色気は、
三味線や胡弓の音と相まって、情緒たっぷり、情感たっぷりです。

その人は星のきれいさに感動し、遠い胡弓に胸が締め付けられ、
思わず涙がこぼれたそうです。僕もこの話に感動しました。
情景が手に取るように分かったからです。

富山から大阪へ出て四半世紀。僕も八尾に友達が随分居て、
山懐の星のきらめきをよく知っているからです。
富山から八尾へ行って、空を仰いだときの感動を今も覚えています。

満天下の星がきらきらと風に揺れ、頭上は星で埋め尽くされていました。
漆黒の闇を埋め尽くすような星の密度です。僕は冷たい風を感じながら
首が痛くなるまで見つめ続けていました。秋でした。

「風の盆」の観光客が引いた後、町内の同好の人々が
自分らの楽しみに街流しをするという話は、友達からよく聞いていました。

本当の「風の盆」は明け方に来て聞かんとわからんちゃ。
富山の方言は末尾に「ちゃ」をつける。

故郷も遠くなり、テレビで見る故郷が身に染みるようになった。
昔、それこそ若い頃の八尾は人、人、人で溢れ、残暑の熱気と雑踏で
歩くこともままならなかった。

むせ返るような人込みに押されながら、どこかで響く三味や胡弓、歌声、
踊り手も皆汗だくの「風の盆」だった。それでも水の音が際立っていた。
八尾は坂道の側溝を本当に水が迸(ほとばし)っているのだ。

季節を幾つも数え、哀調切々の胡弓も去ることながら、
ラジオから流れた星の素晴らしさ、明け方未明の街流しに、
僕はいつしか故郷を遠く離れた旅人のような、
情緒の中に居る自分と、汗だくの現実の世界の両方を味わっていた。

そして寝袋で門名寺の境内で一夜を明かした女性の方も、
若しかしたら旦那さまとの思い出か、過去の郷愁か、
或いは別離などの葛藤でもあったのだろうか。

残暑から初秋への気配の、八尾の夜の熱気と哀調がどうもそぐわない。
富山へ帰った時、普通の日常的な八尾へ行ったことがある。
街は相変わらず坂の両側に民家を並べ、日中の水音だけが盛んで、
せめて喫茶店でもと、洒落た店の一軒ぐらいをと思ったのだが、
街は全く観光地の気配もなく、只淡々と人々の生活の息吹だけである。

年に3日だけの祭りに、宿泊施設も早々求められていないようで、
八尾は若しかしたら結構著名になっている事を、
自ら知ろうとしていないかのようだった。

伏見谷 徳磨

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