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■ずっと雨だった

2010年06月18日

梅雨入りが宣言され、曇天と湿気と雨の季節がやってきた。
最近はこの季節の循環も結構怪しくなってきて、
局地的な豪雨とかゲリラ豪雨とかが喧伝され久しい。

まあ自然の猛威といってしまえばそれまでだが、昔は矢張りもう少し物語があった。
といってもそれ以前はどうかといえば、矢張り大きな小さなサイクルで、
自然の前に為す術なく悲喜劇が繰り返されていたのだろうと思う。

要は大自然の前に人は無力であり、大自然に寄り添って生かされているのだと・・。
そして雨は概(おおむ)ね、大抵の人がちょっと敬遠するようでもあるが、
僕は結構雨が好きなのである。

毎年というわけには往かないが、このカーショップでも日がな一日雨を眺めた事がある。
その日は朝からしのつく雨で、梅雨の真っ只中だった。
激しい雨が道路を濡らし、歩道を濡らし、走行中の車が水を跳ね散らし、
段々人気が途絶え、車の往来も心なし少なくなり、勿論こんな日はお客も来ない。

僕は道路沿いのテーブルでコーヒーを飲みながら飽きずに外を眺めていた。
雨の煙幕のような霧状のカーテンが、それまでの世界を一変させている。

仕事中ではあるが、どこか仕事の緊張感から解き放たれ、気持ちがのんびりとしてくる。
1時間、2時間、3時間・・・・。結構立ったり座ったり、あちこち移動しているのだが、
周囲は総て雨の音、雨の視界である。日常の雑多が遮断され、僕は凄く幸せなのである。

これが激し過ぎて水が溢れたり、浸水したりしたときにはとてもこんな雰囲気は保てない。
又一過性の通り雨だと、こんなに長く情緒的な気持ちは保てない。
そうすると梅雨といっても、こんな風に雨を楽しめる瞬間というのは本当に稀有なのである。

久し振りに昨日、6月15日は午後からずっと夜半までの雨音を聞いていた。
この日は又所用で出掛けていて、縁側という昨今は珍しい(つい最近までの普通の家屋)
場所に座って、庭というか境内というかを眺めていたのである。

紫陽花が雨の中で楚々と咲いている。薄い青がこれから濃く色づくのだろう。
未だ幼く小さな花が、白く弱々しく未熟な紫陽花だ。

そして遠い昔、僕は緑の雨の中を一人走っていた事を思い出した。
北陸富山の梅雨の一日だった。雨の一日を見越し、僕は走り出した。

北陸はそれでなくても灰色の空が多い。この日は朝から雲が空間を埋め尽くし、
視界は総て雨に洗い流されていた。僕は走り回るのが唯好きだった。

富山市内から国道41号線を走る。この道は富山と名古屋を結ぶ道だ。
市内を抜けると大沢野から神通峡谷に入る。飛騨まで続く絶景コースである。

神通川の流れがそのままダム湖になっていて、所々に発電所があり、
眼下深く、満々と緑を貯めた水が雨に煙って神秘的だ。

富山県境近く、交通量は少なく、道は右に左に折れ、
道路の高低差が深い峡谷を覗かせ、走るに真に爽快感がある。

この季節は特に息吹く緑が美しい。新緑が新しい生命の躍動を伝え、
濃淡様々な形の緑が生命の奥深い歓喜を伝え、素直に感動させられる。

時々迸る水流も見える。距離にしたら12、3キロだろうか。
交通量が少ないから、こんな雨の中を楽しむドライバーは又少ない。

一人程々のスピードを楽しみ、カーブを切り、高低差を楽しみ、そして岐阜県に入る。
岐阜県側は愈々山が奥まる。神通川の程よい空間が絶え、目の前は山と川である。

初夏の爽やかな空間を走るときは誠に心が洗われるが、この日は雨である。
それも僕が選んで走る雨である。車は神岡にと入る。

神岡は飛騨高山から富山へ向かう途中の小さな街である。神岡鉱山の町であり、
最近ではノーベル賞に結びついた、地底の宇宙線探査で名が知れた。
周囲を山に囲まれ、山懐の盆地の小さな街だ。

山肌を富山県境から小さな電車が走っていたが、今は廃線になっている。
富山と高山の中間地点だが、僕はここを左に折れ、奥飛騨方向へ向かう。

いわずと平湯、新平湯、福地温泉方面だ。栃尾もある。兎に角温泉地が密集している。
終点の平湯から高山へ向かうも良いが、左に折れると長野へ向かう。

この県境を越える安房峠が好きで僕は良く越えた。渡り終えると左は上高地である。
右は松本。北アルプスの直下を右に左に目まぐるしくカーブし、アップダウンも凄い。

この周辺には本当に良く色々な思い出が一杯ある。自然と人為の景観が素晴らしい。
だが遠く月日は過ぎ、秋の紅葉に呆然としながら走った安房峠は、
余りのカーブと道の狭さ、それより冬季の交通止めから、今はトンネルに変わられた。

上高地の山開き後、人気のない雨の日に帝国ホテルでコーヒーを飲んだとき、
旧いホテルの板敷きのフロアに、客は僕と友達の二人だけだった。
こんな趣味を共にする友とも遠く離れ、今は総てが変わっている。

勿論帝国ホテルは新しくなり、何気なく暇なこんな空間はもうないだろう。
遠いあの時も僕らは時間が止まった様な上高地の空間に甘えて、
二時間ぐらい長居をしていたように思う。ホテルも暇だから放っておいてくれた。

そして雨の日の一人ドライブは、神岡を折れ、馬鹿の一つ覚えのコースのように
平湯へと向かい、バスターミナルが雨の中、閑散とだだっ広いのを見届け帰路に着いた。

片道2時間〜3時間の旅である。緑滴る雨の中、唯前方を見つめるのもいいものである。
だが帰路はさすがに疲れて、緊張感も少し色褪せ、感動も何も置き去りとなる。
富山へ帰ったときにはすっかり徒労という疲労感に包まれているのだった。
だけどちょっと幸せな充実感もあったのである。

伏見谷 徳磨

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この記事へのコメント

(伏見谷 徳磨)

るる様 
昨夜からの雨の微粒子が空中に充満しているようです。
車で走るあちこちに紫陽花が顔を覗かせています。
梅雨の災禍は大変ですが、どうか自然を愛で、又体調には充分お気をつけ下さいませ。
又載せますのでご愛読下され、コメントも頂けたら幸いです。
[2010-06-23 12:36:20]
(るる)

私も雨の日が好きです。ロマンティックでなんとも落ち着いた気分になります。非日常な気分になるのもあるのかもしれませんね
[2010-06-22 21:12:07]
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