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■龍馬・嗤う

2010年11月17日

NHKの[龍馬伝]が大人気である。
幕末の動乱を駆け抜けた英傑として、時代を変えた先駆者として、永遠のヒーローである。

勿論、これは司馬遼太郎氏の小説による所のスターなのであるが、
誰もが皆喜ぶ、英雄像の総てを網羅している所が凄い。

実在の人物であり、幕末などはいってみればつい最近の出来事である。
史実は豊富であり、つい先には口伝なども存在していただろうし、史跡も多い。

今回の大河ドラマにはイケメンのミュージシャン&俳優の福山雅治の起用である。
まあ、誰が主役をやってもそれなりに受ける事間違いなしの素材ではあるが、
この福山雅治の起用が又視聴者の夢を増幅しているようである。

波乱万丈とはまさにこのような生き様をいうのだろう。そして誰もがこの時代はそうであった(と思う)。
龍馬は土佐に生まれ、幼くして母と死別。小さい頃は弱虫で泣き虫で寝小便を垂れ・・と。

まあ小さい頃は誰もが持ち得る性癖でもあろうが、母との死別は矢張り辛い。
そして姉の乙女との姉弟愛。長じて徳川政権の閉鎖的な身分制度の下、下士への差別的待遇。

まあ龍馬は下士なのであるが、一方商人的な家風に育ち、暮らし向きは裕福である。
蔑まれ、虐げられる一方の下士とは若干趣が違う面もあったのだろうけど、
剣術修行の延長から江戸に出、又黒船到来の変革の真っ只中に驚愕し、
否応なしに刺激的で激辛の興奮の渦の中に自らを同調させたのである。

徳川歴代将軍の下、泰平の安楽を貪り、連綿と続いた政権にとってはまさに国難であった。
国難になれば時代を憂う英傑、才子は随分と出てくるものである。
それは国家、社会の必然なのだろう。

薩摩、長州、土佐・・、諸藩のそれぞれのお家の事情。奥に御鎮座の徳川幕府。
そして隠然と日本国家の根幹を成してきた天皇家の存在。

舞台設定は否が上にもまし、徳川幕府の鎖国の間に激変しつつある世界情勢。
この間には技術革新の目まぐるしいものがあり、列強と日本の差は歴然としていた。

海洋の島国は、実はそれなりに平和を随分と謳歌していたのであるが、
突然の大海を越えての蒸気機関船にはさぞかし度肝を抜かれたことだろう。
徳川統治の鎖国制度の中、侵略紛いの圧力は何だか今の日本の状況に似ている。

さて、龍馬は混迷を極めつつある世を泳ぎ出した。江戸から京都、長崎・・、足跡は多岐に渡る。
何しろフリーの身である。裕福な家庭だったから、余り貧困という思いには至らなかっただろう。
好きな事を好きにという気楽な精神構造があったと思う。

旅の先々で、見知らぬ土地の人や景色、そして出会いがその絆を深めていく。
土佐の勤皇党は龍馬の出身母体である。外国船を打ち払う攘夷に龍馬は馴染めない。

無手勝流という言葉があったが、龍馬はまさにそれだった。
夢見る青少年の熱情(誰しもが共有する)が時代の激流に、唯奔流となって生きたのである。

新しい出会いのたびに感動を覚え、世界が広がっていく。
それは時代の寵児たちであり、男に対する女性たちであった。

流れの先に時代を変える予感がする。新撰組や見廻り組が刺客となって狙ってくる。
大変に刹那的であり、刺激的であり、浪士たちは酒と女なしではいられなかったろう。

それぞれがその時代のポジションを担っている。龍馬には藩の後ろ盾などない。
体制に依存して良しとする人や、縛られるのを嫌う自由奔放な人がいる。



龍馬は面白かったのである。自由奔放にスリル満点の世間を渡る事が。
行く先々で女にもてたという龍馬。もてる資質は生まれついたものだろう。

未来に夢を見、改革に夢を見、酒と女に夢を見、・・・、したい放題の人生だった。
だが近江屋で若い人生の幕を閉じる結末とはなった。32歳、しかも誕生日だったという。

司馬遼太郎が龍馬を甦らせて以来、龍馬は日本で傑出した英雄であり、青春の代名詞となった。
剣の腕も立ち、男らしく優しく、そして長身のイケメン(写真及びイメージ)である。
又一個人でありながら、西郷や桂、勝海舟・・などと馴染み、日本の国家改造に足跡を残した。

酒を飲み、女を愛し、お龍なる女性と結婚し、一つ一つが華麗なる物語に彩られている。
英雄は若くして死ななければならない。女性遍歴が華麗である。時代の羨望がある。

色々諸条件があるだろうが、大事なのは栄華から一転して死に至る結末である。
栄華の後の余生を生きては英雄になれない。考えてみると矢張り大変過酷?でもある。

最後の惨殺の瞬間に絶えた龍馬であるが、その無念の程はさて置き、
常日頃の行状がここまで美しくきれいに描かれる様には苦笑いをしていると思うのである。

伏見谷 徳磨

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